数年後に後悔しないために… 広色域モニターのすすめ

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今回の記事は、「ライトルームやフォトショップでRAW現像を行うなら、最初から広色域モニターを使いましょう」という内容です。

とても重要な内容なのですが、意外とご存じない方が多いようです。

以下の順番で説明していきますね。

目次

  1. 色域とは
  2. ライトルームやフォトショップの仕様について
  3. なぜ広色域モニターが必要なのか
  4. お勧めの広色域モニター

カラーマネジメントをしっかり理解したい方は、以下の記事もお読みください。


それでは早速始めます。

      1. 色域とは

        「色域」というのは、「色の範囲」を示すもので、画像表示の際、「どれだけ豊かに色を表現できるのか」などを表すために用いられるものです。

        以下のように、馬の蹄(ひづめ)状の概念図と共に表されることが多いのですが、国際的にいくつかの規格が決まっています。
        (蹄の部分が、人間が認識できる色、ということになっています。)

        CIE1931_sRGB_AdobeRGB_ProPhoto_RGB

        sRGB(青い三角形)

        国際電気標準会議 (IEC) が定めた国際標準規格で、一般的なパソコンモニターなどは、この規格に準拠しています。世の中のほとんどのウェブ・コンテンツも、この色域を基準に作られています。

        AdobeRGB (赤い三角形)

        米国のアドビ システムズ社によって提唱された規格で、sRGBよりも緑の方向に広い色域です。最近は、このAdobeRGBを99%カバーしているパソコンモニターなども販売されています。

        ProPhoto RGB (ピンクの三角形)

        米国のコダック社によって提唱された規格で、人間の目が認識できない色まで含んだ、とても広い色域です。ProPhoto RGBの色域を全て表現できるモニターは販売されていません。(「人間の目が見ることのできない色を表現できるモニター」などというものはあり得ませんので。)

        これら国際規格に対して、「個々のデバイス(例:パソコンの液晶モニター)が持つ色域」というものがあります。

        例えば、下図の黄色い三角形はEIZO社のCG2420というカラーマネジメント・モニターの色域です。

        このモニターは大変色域が広く、AdobeRGBと重なり合っている部分(AdobeRGBカバー率と呼びます)が99%あります。また、三角形の面積ではAdobeRGBに勝っており、赤の表現力がとても豊かです。赤の三角形(AdobeRGB)と黄色の三角形(CG2420の色域)の右下の角の位置を比較してみてください。

        CIE1931_CG2420
        一方で、価格の安い外付けモニターや、一般的なノートパソコンのモニターは、sRGBよりも狭い色域のものが殆どです。

        例えば、下図の黒い三角形のような感じ。

        CIE色域図_generic

        一般的に、パソコンメーカーが、モニターの色域の仕様を公表することは少ないのですが、価格の差はこういうところに現れていたりするものなのです。

      2. ライトルームやフォトショップの仕様について

        ライトルームの「現像モジュール」や、フォトショップのRAW現像に用いられる「Adobe Camera Raw(以下「ACR」)の色域は、「ProPhoto RGB」です。つまり、とても広い色域を使ってRAW現像することができる」ということです。

        お使いのモニターが、一般的なモニターで、色域がとても狭いものである場合、ライトルームやACRは現像の際、モニターでは表示することのできない色を沢山作ってしまっていることになります。

      3. なぜ広色域モニターが必要なのか

        もう既におわかりかと思いますが、広色域モニターの場合、ライトルームやACRが作り出す色を、より多く表示することが可能です。逆に、狭い色域のモニターで現像作業を行い続けると、将来、広色域モニターに買い替えた際、それまで見えていなかった色を初めて見ることになります。「こんな派手に現像したつもりじゃなかったのに…」と感じることもしばしば。

        ですから、なるべく早いタイミングで、広色域モニターに買い替えるべきなのです。
        「レンズは何本も持っているが、パソコンのモニターは安価なものを使っている」という方を時々お見受けしますが、次のレンズに手を出す前に、広色域モニターの購入を是非検討していただきたいと思う次第です。

        写真をプリントする方も、広色域モニターの早期導入を検討するべきだと思います。

        以下の水色の線は、キヤノンのPRO-100Sという染料インクのプリンターを使って、ピクトリコの「ホワイトフィルム」という紙(正確にはフィルム)に印刷する際の色域を表しています。

        CIE色域図_Pictorico_Canon

          

        ホワイトフィルムは、とても色の再現性が高く、私もよく使っているのですが、CG2420のような広色域モニターを使って写真を現像した場合、その色域(上図 黄色の三角形)は、水色の線にかなり近いため、画面で見ているのとかなり近い色で印刷することが可能となります。もちろん、しっかりカラーマネジメントした上での話となりますが。

      4. お勧めの広色域モニター

        少々お高くなってしまいますが、お勧めのモニターは、EIZO社のColorEdge(カラーエッジ)シリーズです。ほとんどのモデルがAdobeRGBカバー率99%を誇り、輝度ムラなども感じない、完成度の高い作りになっています。

        中でも一押しは、「ColorEdge CG2420-Z(キャリブレーションセンサー内蔵)」。

        「EIZOダイレクト」というメーカー直販サイト以外ではほとんど扱われていない24インチのモデルで、2022年2月28日の時点で、¥172,000(税込)となっています。(15周年記念セール実施中のようです。)

        カラーマネジメント・モニターは、「カラリミター」というセンサーを使ってその色を計測し、自動で色を正しく補正してくれるものが多いのですが、このモデルはセンサーが本体に内蔵されています。例えばタイマーを200時間に設定しておくと、モニター使用時間が200時間に達した際、センサーが現れ、自動でキャリブレーションを行ってくれます。(左上の写真の画面上部、赤くなっている部分がカラリミターです。)

        モニターの解像度は1920×1200ピクセル。CGシリーズの中には解像度が4Kのものもあるのですが、一般的な使用の場合は、この解像度で十分だと思います。(パソコンの仕様が古いと、4Kの場合、ライトルームの動作速度が落ちたりすることもありますし。)

        予算にあまり余裕がない方には、弟分のColorEdge CS2420-Zというモデルをお勧めします。
        こちらも24インチの1920 x 1200 ピクセルですが、センサーは内蔵されておらず、別売りです。

        センターとセットの商品が、EIZOダイレクトで¥113,900(税込)となっています(2022年2月28日時点)。CG2420と比較すると、若干コントラスト比が劣りますが、許容範囲内だと思います。センサーが外付けなので、定期的に接続し、モニター面にぶら下げてキャリブレーションする必要がありますが、価格はだいぶお安いので魅力的だと思います。

        よろしければ、購入を検討してみてくださいね。

    今回の記事はここまでです。

    カラーマネジメントをしっかり理解し、正しい環境で写真のRAW現像を行いたいとお考えの方は、是非一度、「マサ・オニカタのライトルーム使い方講座(マンツーマンレッスン)」をご受講ください。

    プライベート・レッスンですので、ご自分のペースでしっかりと学んでいただくことができます。

    ライトルーム初心者からプロのカメラマンまで、幅広い層の方々に受講していただき、大変ご満足頂いています。

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  • それでは、お申し込み・お問い合わせをお待ちしております。

    ミヤビプロダクション
    マサ・オニカタ