今回の記事は、「ヒストグラムを学ぼう」の初級編①、②、そして中級編①に続く第4弾となります。
過去の記事にご興味のある方は、以下をお読みください。
撮影レッスンで生徒さんに写真の撮り方をお教えする際、「普段、アンダー気味に撮るようにしています」という声をよく耳にします。露出に意識を払いながら撮影するのはとても良いことなのですが、今回の記事では、RAW現像を前提とした撮影では、「アンダー気味に撮るべきではないケース」と「アンダー気味に撮るべきケース」が存在する、ということを、ヒストグラムを見ながら説明していきたいと思います。
まずは「アンダー気味に撮るべきではないケース」から説明しますね。
以下の写真は、みなとみらいの夕暮れを大黒ふ頭から撮影したものなのですが、日没の瞬間で、空の光が柔らかになり、「白とび」や「黒つぶれ」をさせずに撮影できる明るさでした。
2枚とも絞りが「f/11」、ISO感度が「100」ですが、①(左の写真)はシャッター速度が「1/50 秒」、そして、②(右側の写真)は「1/100 秒」で撮影しています。その結果、写真②の方が「アンダー気味」になっていますね。
また、この時のPhotoshopのヒストグラムはそれぞれ以下のとおりとなります。
(Lightroomのヒストグラムではカラー6色とグレーのヒストグラムが同時に表示されますが、以下は、その中の「グレー」の部分と同じだと理解してください。)
ご覧になっておわかりのとおり、両者のグラフは、右と左の縦軸の内側に収まっているため、「白とび」も「黒つぶれ」もしていないことを表しています。
こういうヒストグラムの場合、「アンダー気味」に撮ることは実は正しくありません。もちろん。RAW現像を行わず、「撮って出し」の状態で写真をそのまま使うのであれば、①でも②でも、ご自分の作風や意図にそぐった露出で撮ればよいのですが、RAW現像を行い、写真を更に美しく仕上げるという意図がある場合は、①のように、「少し明るめに」撮影するべきです。「明るめ」といっても、「ヒストグラムが右の縦軸に触れない程度」にしておく必要はありますので、その点は注意してくださいね。
それでは、なぜ①の方が良いのでしょうか。
理由は:
A: 記録される情報の量
と、
B: 現像処理を行った後のノイズ量
です。
まず、「A」の「記録される情報の量」に関してですが、これは単純に2枚の写真のファイルサイズを比較すればわかります。
2枚の解像度は同じですので、このファイルサイズの違いは、記録されている情報の量の違い、ということになります。
「B」の「現像処理を行った後のノイズ量」に関しては、以下の「現像済み写真」2枚をご覧ください。(基本補正パネルで「露光量」、「ハイライト」、「シャドウ」、「黒レベル」のみを変更し、2枚の写真の見え方が同じになるように調整しています。)
一見同じように見える2枚の写真ですが、拡大してみると以下のように、ノイズの量に大きな差がある事がわかります。(写真をクリックすると拡大表示なります。)
②の「アンダー気味」に撮影した写真では、現像の際に、暗部を大きく持ち上げ、明るくする必要がありました。そして、暗い部分を明るく変更すると、このようにノイズの量が顕著に増えてしまうのです。
「白とび」も「黒つぶれ」もしない範囲内で、露出を少し変える自由度があるケースでは、「アンダー気味」ではなく、「少し明るめ」に撮るべき、ということがお分りいただけたと思います。このように、ヒストグラムが少し右に寄るように撮影する方法を、英語でETTR (Expose To The Right)と言います。「右寄りに露光する」という意味ですね。
次の例は、逆に、「アンダー気味に撮るべきケース」です。
以下の写真では、厳しい逆光で、手前の鳥居と、背景の空の明暗差があまりにも激しいため、「明部」か「暗部」のどちらかを犠牲にして撮影する必要がありました。
2枚とも絞りは「f/8」、ISO感度は「100」ですが、①はシャッター速度が「1/500秒」、②は「1/60秒」です。
この時のヒストグラムはそれぞれ、以下のとおりです。
写真①は鳥居の一部が黒つぶれしており、写真②は空の一部が白とびをおこしていますよね。
RAW現像でそれぞれ、明るさを補正し、両者の見え方を同じにしようとしても、以下のように、②の白とびした部分は白く「べた塗り」されたように残ってしまい、雲の繊細な模様やグラデーション(階調)などは戻ってきません。
写真②のように、明るく飛んでいる部分というのは、とても目立ち、写真の完成度を大きく損ねる結果になってしまいますので、「明部」、「暗部」のどちらかを犠牲にしなくてはならない厳しい光の条件の場合は、アンダー気味に撮影するのが良いわけです。写真①は、暗部を持ち上げているので、その分、ノイズが載りますが、白とびの写真②と比較して、ダメージは遥かに少ない結果となっていますね。
ということで、以上をまとめると、こんな感じになります。
- ヒストグラムが左右の軸に触れていない被写体の場合は、「少し明るめに」撮影する。
- 逆光など、厳しい光の条件で、ヒストグラムが左右の軸の間に収まりきらず、「明部」、「暗部」のどちらかを犠牲にしなければならない場合は、「アンダー気味に」撮影する。
以上が、RAW現像を想定した露出の決め方です。フィルム撮影や、「撮って出し」用のJPEG撮影と比較すると、「RAW現像前提」の撮影では、このように、撮り方が変わってきますので、しっかり理解して、正しい撮影方法を、常に心掛けてくださいね。
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